「あなたがこの業界に全BETするのか、考える1年にしてください。」
これは私が内定を受けたときのことばであり、お題であり、 きっといつまで経っても悩み続ける問いになるんだろう。
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私には、病的な執着があるものがある。
「結局これが一番の動機となり、私は羊飼いという仕事に惹かれることになる。後に羊飼い仲間から聞いた話だと、このように羊と羊飼いに憧れることを『羊病にかかる』というらしい。まさにこの頃の私は、羊病にかかりたてだったのだ。」 私の最後の羊が死んだ - 河崎秋子
私の病は羊ではないけれど、私は羊を見つけている。眠る前、1匹、2匹と、羊を数えるよりも長い時間、わたしはそれを数えている。夢の中でさえ、それを夢見ている。
私は病にかかっている。私は、広告病だ。
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広告を知るまで、うだつの上がらない大学生活を送っていた。何者かになりたくて、何者にもなれなくて、たらたらいろんな技術を触ったり、遊んだりして、わかった気になって辞めたりして、モラトリアムの模範解答のような大学生活を過ごした。そのおかげでこのサイトとかを作れているから、過去の自分ありがとう、ではあるけれど、webに人生を賭ける熱量は私には無かった。
熱を探していた、それが世界のどこかにあるのか、自分のどこかにあるのか、全然分からなかった。
急な閃光だった。広告は、私の光になった。
初めて宣伝会議賞を知った日のこと。初めてカンヌ受賞作を見た日のこと。広告をやるならあなたとは別れるって当時の恋人に言われた日のこと。でも辞められないから広告のゼミに入った日こと。100本じゃ宣伝会議賞の一次に一本も通らなかった日のこと。後輩は7本くらい通してた日のこと。初めてヤングカンヌに応募して惨敗した日のこと。結局恋人と別れた日のこと。
広告との日々は、光り輝いている。上記の通り、エピソードにするとどう考えても悪い思い出だけど。
それでもまだ、私の光は広告らしい。 私は今日、広告会社に入社した。
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改めて至上命題に立ち返る。 「あなたがこの業界に全BETするのか、考える1年にしてください。」変な会社だと思った。働きながら考えていいの?と。
私はもうオールインするつもりだったし、てかここまできて引き下がれないし。でも不安がないか、と言われたらあるに決まっている。どう考えても、周りと比べれば学歴は低いし、天才的でもなければ、快活でもない。お金に執着もないし、夜は寝たい。平凡だ。
そして何より、私は広告がいつまで経ってもわからない。過度の恋心が視野狭窄を引き起こすように、私は広告にお熱だから、広告が全然わかっていないと自認している。
だから、1年間で何をするべきか、必死で考えた。
考えすぎた私はいつもどおり血迷って、企画を持って、初日に社長に突撃しようと決めた。なぜなら、私は4/1から広告屋だ。寝る前も、夢の中も、夢が覚めてしまっても、広告のことを考える人間だ。だから私は、企画をしなければいけない。
私はこれから、社長に、新卒入社2分で企画を提案する。そしてこの文章をあなたが読んでいるということは、私の提案は受け入れられた、ということになる。
前略が長くなったが、
これは、私が広告会社の新卒社員1日目から、1年をかけて、 「あなたがこの業界に全BETするのか、考える1年にしてください。」という問いに対し、100本の翻訳行為を行うことで、
広告というものへの愛を証明する企画であり、 広告というものへの愛を翻訳するWebメディアである。
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Ad*TL - Advertisement Translation Lab.
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以下企画書です。































